マイケルジャクソン
僕が本格的に音楽に目覚めたのは高校3年になってからだった。
他と比べると遅いかも知れない。
それまでは世間で流れている流行り歌すら把握していなかった程だ。
それが今となってはPC内にはざっと4万曲ほど入っているくらいになってるのだから、人間どうなるか分からない。
僕を本格的に音楽の世界に誘ってくれたのは他でもない、「マイケルジャクソン」である。
とはいっても、いきなりマイケルの曲を聴いたりした訳ではなかった。
マイケルは丁度その時、複数の面倒な裁判に巻き込まれている時期であった。
後から考えると、マイケルはハメられていたのだ。
マイケルの存在をよく思わない連中から目をつけられて自己破産に追い込まれようとしていたのだ。
しかし、天はマイケルの味方をした。
当然である。マイケルは有らぬ罪をかぶせられていただけなのだから。
それはいいとして。
僕がマイケルをはじめて目撃したのはTVで、マイケルが裁判に向かうという中継が映し出されていた時であった。
黒くて大きなサングラス。肩幅の広い黒ス―ツ。
日傘をさし、かなり細身に見えた。
頬は信じられない程こけている。
肌は真っ白、白人なのか?
でも、見出しは「黒人歌手」となっている。
そして無精髭も生やしていてズボラな印象。
そうして、これから自分が裁かれる側の裁判に出廷しようというのに、ファンからの声援に答えて、彼は自分の乗ってきた車の上に飛び乗り、長くて細い手を振ってアピ―ルしていた。
正直、マイケルの事をなんにも知らなかった僕としては、「なんて不謹慎な野郎だ」という感想をもった。
多分、そうとうイカれたヤツに違いない、とも思った。
しかし、ここで重要なのは、僕は(自分もそういう所があるからか知らないが)イカれたヤツに興味をもつ、という所があった。
僕はマイケルに激しく興味をもった。
そうして、どうやらミュ―ジシャンと云うではないか。
では、アルバムみたいなモノがあるのだろう。
僕はマイケルジャクソンという男がどんな音楽をやっているのか気になった。
こんな事は僕にとって初めてだった。
なんせ、それまでろくに邦楽さえ聴いていなかったのだから。
それなのに、いきなり洋楽。それもジャンル的には黒人のR&Bに手を出そうなどとよく思ったモノだ。
今考えても、当時の自分の思考回路が理解出来ない。
考え方が飛躍し過ぎている。
運命だったのだろう。
恐らく、この一件がなければ、僕は今もそんな真剣に音楽など聴いているような人間ではなかっただろう。
そうして生まれて初めてCDというモノを買った。
マイケルのベスト版であった。
正式に云うと、アルバム「ヒストリ―」のDISC1だけが独立している一枚組のベストアルバムだ。
そして、一曲目は「ビリ―ジ―ン」。
そのイントロを聴いた瞬間!
僕の人生は確実に今までのモノとは変わっていった。