終わりなきエヴァンゲリオン
「エヴァンゲリオン」。
「ヱヴァンゲリヲン」?
まぁ、どうでもいいのだが(笑)
エヴァはもはやブラックホ―ルの様な化け物である。
漫画、小説、関連本、アニメ、映画、CM、玩具、ゲ―ム、CD、演劇、パチンコ、コスプレ、お笑いのネタ、ネット民の餌....
兎に角、メディアミックスの化け物である。
今の時代、エヴァでなくとも、この激しいブランド戦争に勝ち残った強者(つわもの)は、なんでもかんでも飲み込んで巨大化するだけ巨大化するのは珍しくもなんともないのであるが。
エヴァはそのハシリとも云えそうだ。
とんでもないブラックホ―ルである。
そんなエヴァもQを観る限り、そろそろ飽食気味で食あたりを起こしている様な所がある。
食べ過ぎだ。
そもそも、20年前、1995年の時点で庵野秀明がエヴァンゲリオンという作品をどういう風に転がそうとしていたのかはよく分からない。
彼は結果論、天才であったから、もしか今のようなブラックホ―ル状態を見越していた部分もあったのかも知れない。
そうだとすれば相当スゴいとしか云いようがないが。
庵野さんはエヴァに全身全霊を賭けていたようで、アスカラングレ―さんが来日するあたりで既に制作費が尽きていたという話だ。
確かにエヴァの10話くらいまでの作画のクオリティ―といったら本当にヤバイ。
それがたたって、使える紙もなくなってきたという理由もあって、例の後半の殆ど動かない絵、過去のシ―ンの使い回しを心理描写を表す的な感じで転用するなど、苦肉の策なのか新しさを狙ったのか、どうしようもなかったのか確信犯だったのか、よくわからん演出になってゆく。
まぁ、エヴァの新しかった所って、アニメを実写映画っぽい感じで解釈したような手法を多様した所にある、と思っていて。
殆ど絵が動かないで長セリフが続くとかは、そういう効果に一役買ってると思ってるので全然イイんだけど。
兎に角、それらの演出は、「吉」と出た。
特に事あるごとに引っ張り出される最終2話の、ある意味革命的な演出やシナリオ進行は伝説と化している。
ただし、次回予告の時点では劇場版のラフスケッチも出てくるあたり、庵野さん的には不本意だったのかも知れない。
しかし、エヴァがきちんと完結せずに、多くの謎をすべて投げっぱなしにして終了した事で、結果的にエヴァは社会現象に発展する道をたどる事になる。
そう。エヴァンゲリオンとは、視聴者が能動的に意味を付加していく、という楽しみ方が出来る「参加型アニメ」と化したのだった。
それは、史実がよくわかっていない大河ドラマを自分なりの見解をもちながら鑑賞したり、もしくは作者本人による録音の残っていないクラシックを自分なりの解釈で演奏したりするのとも似ている。
未完成だからこそ、真相が分からないからこそ、無限に増殖が可能なのである。
庵野さんは最初からそれに気付いていたかは定かではないが、「彼氏彼女の事情」あたりを観ると、もう意図的にそういう方法論を乱用しているふしがある。
ガッチガチに設定をつくるのではなく、取り合えずオモシロそうな「ネタ」をぽいっと提供し、しばらく転がり具合を観察する。
そのネタというのは、庵野さんの場合はお得意の過去のアニメや映画からの「オマ―ジュ」戦法である。
それでまず視聴者が食いつきそうな餌をばらまく。
その食いつき具合を見て、次の餌をばらまく。
その繰り返し。
しっかりした物語を創るつもりなど最初から、ない。
内輪ネタで楽しむ感じだ。
わからんヤツは着いてこなくていい、という姿勢だ。
芸術至上主義的であり、インテリジェンスである。
これは、映画ならゴダ―ル。
小説なら芥川龍之介みたいな風でもある。
老若男女にはウケないかも知れないが、マニアにとっては神様のように思えるかも知れない(笑)
老若男女にウケるのは、スピルバーグや志賀直哉なのだろうが、僕にとっては野暮ったくて退屈だ(笑)
しかし、なかなか手堅そうなこの方法論も、キムタクが主演した「安堂ロイド」のように、やっぱり一般層向けではコケたりもする。
そういう意味で「シン·ゴジラ」も少し(とても)不安だ。
庵野さんの映画が成功しないのは、結局彼の創るモノがマニアの域を出ないから、なのかも知れない。
スノッブな連中のクイモノにされているという。
エヴァはその中でも一般層の人気を勝ち得るに至った作品である。
しかし、それも、「ヤマト」「ガンダム」「ウルトラマン」「ゴジラ」「デビルマン」「マクロス」「ナウシカ」「ガイナックス」「SF映画」「純文学映画」など過去の作品群を見事にひとまとめにして、イイトコ取りを行い、アップグレードさせるのに成功したからだろう。
それも「アニメーション」というフィ―ルドで。
そんなエヴァも来年には一応劇場版の完結編となる「シン·エヴァンゲリオン :|| 」なる作品が公開されるらしい。
ホントにこれで終わるんだろうか(笑)
もうけっこうどうでもよくなってきた感じもある.....
などと云いながらも、多分映画館には行ってしまうだろう。悔しいが気になるもの(笑)
だって、今のクリエイタ―で本当の意味で期待出来る人って(映像畑だったら)庵野さんくらいしかいないんだもん。
みんな新しい事やってる風で、全然こじんまりとしちゃってて詰まんないんだもの(笑)
もっとはちゃめちゃやればいいのに。
(それを許してくれない現状のアニメ界のキビシイ事情があるのは承知しているが)