窓際族より胸いっぱいの愛を

(You Can't Always Get) What You Want ?

ミスチルについて

ミスチルって結構野心的なバンドなんですよ。


デビュ―時、間もない頃には既に、「ライバルはドリカムやサザンやユ―ミン」、「CDを100万枚売るのがとりあえず目標」「その為に、スタッフにタイアップを積極的に取るように頼んでいる」などと大きな発言と戦略性を隠すことなく発信していた。



売り上げで云えばBzに劣るけれど、事実上、日本で一番(一般層の)需要の多い人気バンドだと思う。



現代の日本版ビ―トルズというかね。



それはかつて、「はっぴいえんど」だったのかも知れないし、「チュ―リップ」だったのかも知れないし、「サザンオ―ルスタ―ズ」だったのかも知れないけれど、そういう役割、位置を担っているのは2015年現在は「ミスチル」だと云っても過言ではないだろう。


バンドとしてど真ん中というか。

ポップミュ―ジックとしてもヒットしているし、音楽的な挑戦もしている。
(そりゃ、アバンギャルド系ほどの事は出来ないにしても)


そして、その中心人物である「桜井和寿」という男。

これは天才と云ってもいいだろう。

ポ―ルマッカ―トニ―と並べても遜色ない、などと云ったら大袈裟か。


しかし、この男のメロディを創る才能といったら、並みのミュ―ジシャンが束になっても敵わないだろう。


いつかのインタビュ―にて、桜井がメロディは楽器を使って創るのではなく、鼻歌で創って、それをレコ―ダ―に吹き込んでおいて、あとでギターやピアノを使ってコ―ドを合わせていく、という話が公開された。



別にこれ自体は驚くべき事ではないと思う。


だって、楽器を使って創ると、どうしても手癖の進行を使ってしまって似たような曲ばかりになってしまうし、限界があるからである。

これは曲を創った事がある人ならすぐに解る事であろう。

この時のインタビュ―の相手はコブクロの小さい方(名前がわからない、すまん)だったが、随分と驚いていた。
僕は寧ろコブクロのヤツが驚いている事に驚いたものだが。


「だから、君は似たような曲ばかり発表してるんじゃないのかい?」と心の中で突っ込みを入れたほどだ。


僕も曲を創ったりするが、(まぁ、そんなに楽器をうまく弾けないというのもあるが)楽器を使ってメロディを創る事は、ない。


そんなん、めちゃめちゃ限定されるのは目に見えているからだ。


頭の中でメロディを創ったほうが無限の可能性がある。

僕もたくさんのミュ―ジシャンと関わってきたが、案外みんな楽器を使って創っている人の割合が多くて(というかほとんど!)ビックリしたものだ。


桜井和寿は音符の海をスイスイ泳いで、素晴らしいメロディを描き出す。

メロディのセンスとはそういうセンスだ。


この能力だけで云ったら、世界で10本の指に数えてもいいんじゃないだろうか?


それも20年以上経った現在もまだまだ衰えていない。

まだまだ新しい種類のメロディも紡ぎ出す事が出来ている。

メロディを創る能力に限っては、ちょっとここまでの人は日本の歴史上の作曲家を探してもなかなか思いつかない。

20年以上もそんなにかぶらない新しいメロディを自分の中から出し続けられた人というのは。


長く生き残る事が出来ているミュ―ジシャンは十中八九、常に変化をしている。

ミスチルも例外ではない。



今のミスチルと、90年代のミスチルはまるで違う。


それが顕著にわかる、確認出来るのが、ミスチル主演、小林武史監督によるドキュメンタリ―調映画「es」である。

1995年、ミスチルの人気が一回目の絶頂をむかえていた時に公開されたモノである。

しかし、未だにこの映画、DVD化はされていない。

ひょっとして、メンバ―的には黒歴史なのだろうか?


確かに中身を観てみると、今とはまったく違う青いミスチルがそこに居る。

特に、桜井和寿に関してはある意味で「イタい」(笑)

しかし、隠さなければいけない程の代物ではない。


僕がまだそんなに音楽を知らない時にこの映画を観た時には、桜井和寿桑田佳祐を目指しているのかな?という感想をもった。


しかし、後に、そうではなくて、彼が目指していたのは、U2のボノだという事に気付いた。


何から何までそれはU2的なモノであった。


そのスタイルが桜井和寿という男に合っていたか、というのはちょっと何とも云えない。

ただ、カリスマ性という点では今よりもあったかも知れない(笑)

大体にして、U2のボノ自身も90年代の中頃は迷走していた時期でもあり(いや、僕はこの頃のU2が寧ろ好きですけどね)それを真似していた桜井という構図なのだからなんとも評価し難い(笑)


でも、この94年から97年くらいまでのミスチルがアルバムやライヴで繰り広げていた活動というのは、ポップ畑としてもアバンギャルド畑としても、実は後にも先にもやっていないような画期的なモノではなかったか?とは思います。


まぁ、こういう事はたくさんのお金と、尋常でない人気とに裏打ちされてはじめて成し遂げられるモノだとも思います。

今、こんな事をしようとしてもムリでしょう。



それにしたってこの頃の桜井和寿の紡ぎ出すメロディは神がかっていて、「Tomorrow Never Knows」(ビ―トルズの曲名からの引用ですね)や、「終わりなき旅」(U2の曲の邦題からの引用ですね)などはホント天から降ってきたようなメロディですね。



歌詞も素晴らしいし。
「終わりなき旅」なんて、これ一曲だけで、他のすべての曲が役割を終えてしまうのではないか?と思える程、たった一曲にすべてが凝縮されている最強の曲だと思います。


日本版「Hey Jude」ですね。


で、大抵のミュ―ジシャンというのは、一回創作の山場をむかえると、その後は似たような曲を量産したりして細々と活動していくのが殆んどなのですが、桜井和寿という人は90年代に散々名曲を残したというのに、00年代には「youthful days」「sign」「HERO」「しるし」みたいな曲を創ったり、それ以降も、「旅立ちの唄」「HANABI」「ファンファ―レ」「足音」ほどのクオリティーの楽曲を創れるというのは、ちょっと信じられないです。



それでもミスチルをよく知らない人や音楽をあまり分析的に聴かない人にとっては、「おんなじ様な曲じゃない?」という意見が出るかもしれませんが、普通はもっともっとマンネリ化してもおかしくないし、メロディも印象に残る度合いがガクッと下がるモノです。



あんまりもちあげたくもないですが、スゴイものは素直にスゴイ!と云いたい所はありますので。


桜井和寿さん、あんたはホントにスゴイ。

でも、こないだのアルバムを聴いて、流石にそろそろ限界かな?とも感じましたがね。

最後の花火、というか。


逆にこっからまた新しいメロディをバンバン創って盛り返してきたら、逆に怖すぎますからね(笑)