新しいモノ
「新しいモノなど、ない。」
これは、物創りに限った事ではなく、すべてにおいて云える事である。
大切な事だから、もう一度云います。
「新しいモノなど、ない。」
そう。
........いや、まてよ?
ない事もないか。
唯一、「新しい」、と云えるモノがあるかも知れない。
それは、「自分」だ。
いわゆる、「個性」である。
おんなじ人間はこの世には存在しない。
だから、「自分」は新しいかも知れないですね、うん。
でも、それ以外のすべての要素は、もう過去にすべてこの世になんらかのカタチで出てしまっている。
もっと云えば、この世の一番はじまり、はじめのはじめ。
そのイニシエの時代から存在していたのだ。
それを、新しい時代の、新しい人間達が、自分達の生きる時代や生活スタイルや趣味趣向に合わせて、変化させてきただけである。
だから、とりあえず、この文章では「物創り」という観点に的をしぼって話すとすれば、「過去の作品を観察する必要性」がある。
これは絶対的に必要な事である。
特に、すぐれた作品を創ろうと画策しているのなら尚更だ。
現代からいくらでもいくらでもいくらでも遡ればイイ。
そうして、それをパクればイイ。
「パクりはダメ」みたいな事を云う人が居るが、そういう人は多分、物を創ろうと思った事がないのだろう。
最初に云った。
「新しいモノなど、ない。」
そう。
絶対、何やってもかぶってる。
評価の仕方としては、「新しいかどうか」ではなく、「オモシロイかどうか」、である。
オモシロければ、世間は許す。
ただのパクりで、尚且つ、詰まらなければ串刺しにされる。
それだけの話だ。
例えば、僕はBzが好きだが、Bzは洋楽からのパクりでよく批判されているのを見る。
しかし、そんな事はオレンジレンジでなくとも、ミスチルでもドリカムでもサザンでも何でもやっている事である。
問題は、「自分のモノに出来ているかどうか」、である。
詰まり、唯一、新しいモノである「自分」。
これを、過去の作品の要素とウマく融合させる事によって、「まるで新しいモノかの様に見せかける」、というのが、せいぜいア―ティストが出来る精一杯の事なのである。
「凡人は模倣し、天才はパクる」
で、ある。
例えば、僕がBzで一番好きな曲、「ZERO」という曲。
この曲は、サビ以外の歌メロは、アメリカの人気バンド「イ―グルス」の「Victim Of Love」のメロディに酷似しているが、ウマく、日本の歌謡ロック風に変えて使用していて、感心させられる。
完成度も物凄く高い。
こうなると、批判などする気にもならない。
兎に角、結局何が云いたいかというと、すぐれた作品を創る為には、過去のすぐれた作品をもっともっと研究して、あわよくば自分のモノにしていかなければならない、という話なのである。
どうも、現代のア―ティストにはそれが足りない気がする。
勿論、彼らも当然やっているのだろうが、まだまだ甘い。甘過ぎる。
ピカソだって、黒澤明だって、ジョン·レノンだって、誰だって過去の偉大な芸術作品を沢山観て、聴いて、分析して、そうして、そこに自分の個性を混ぜて、素晴らしい作品を創りあげたのだから。
「知識が有りすぎると弊害になる」なんていう考え方もあるし、そっち方面の意見もよ―く解る。
が、基本、絵にしても、音楽にしても、映画にしても、演劇にしても、漫才にしても、ゲ―ムにしても.....まぁ、何でもいいんだが、何かの分野で「これはスゴいモノを創ったねぇ―」と云われるくらいの作品を創ろうと思えば、その分野の過去の名作に嫌というほど触れなければならない。
自己満足や、前衛的で、一般の人の理解は得られなくてもいいんだよ、ってな具合なら問題なかろう。
しかし、ある程度、大多数の人間に受け入れられるような「ポップ」な作品を創ろうと思えば、前述したような事は必須項目であろう。
今の時代はネットをはじめとして、情報はムダに得られやすい環境にある。
Youtubeなどで好きなア―ティストの作品など観ていると、関連動画が出てくる。
それをサ―フィンしていくと、自分のまったく知らなかったア―ティストに辿り着けるかも知れない。
で、辿り着くのは、いい。
しかし、問題はその後、どうするか、だ。
それが、どこの国の、どこの地域の、どういう境遇で育った人で、その人がどういう時に、どういう心境で創った、どういう分野の、どういう意味をもつ作品なのか。
そういう事を自分で探究しなければいけない。
ただ、右から左へ情報を受け流しているだけでは、それは本当に「知った」という内には入らない。
昔の人は情報が少ない分、知ったモノを何度も何度も観たり、聴いたりして、自分なりによく探究していたと思う。
今の人にはそれがどうも足りない、というのが、あくまで僕の意見である。
物や情報に不自由しない生活は、人の思考を停止させる傾向がある。
ア―ティストたるもの、もっと深く深く、地球の裏側まで掘り下げていって欲しいものだ。
じゃないと、昔の人にゃ勝てないよ。